親知らずの抜歯って痛いの?

親知らずの抜歯と聞くと、「怖い」「痛そう」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
確かに、他の歯に比べて生え方が複雑なこともあり、抜歯が必要な場合には特別な処置が行われることもあります。
しかし、実際にはきちんとした手順を踏み、局所麻酔を使って行うため、ほとんど痛みを感じずに抜歯することができます。

親知らずの抜歯前に行う準備と診査

抜歯を行う前には、まずレントゲン撮影(パノラマX線)やCT撮影を行います。
親知らずの位置や角度、神経や血管との距離を正確に把握するためです。特に下の親知らずは、下あごの神経(下歯槽神経)に近いことが多いです。抜歯時にこの神経を傷つけるリスクがある為、事前の確認がとても重要になります。

診査結果によっては、一般的な歯科医院で抜けるケースもあれば、より安全のために口腔外科専門医のいる医療機関で抜歯を行うこともあります。

また、抜歯前には以下のような確認も行います。

  • 血圧や全身状態の確認
  • 服用している薬(特に血液をサラサラにする薬など)のチェック
  • 妊娠中・授乳中の有無の確認

これらを確認したうえで、安全に処置を進めるための準備を整えます。

抜歯の当日の流れ

親知らずの抜歯は、次のような手順で行われます。

① 麻酔

まずは局所麻酔を行います。
歯ぐきに少しチクッとする程度の注射で、数分でしっかりと効いてきます。麻酔が効いている間は痛みを感じません。

「途中で痛くなったらどうしよう…」と心配される方も多いですが、処置中に痛みを感じる場合はすぐに麻酔を追加するので安心してください。

② 歯ぐきの切開・歯の分割

親知らずが歯ぐきの下や骨の中に埋まっている場合は、歯ぐきを少し切開して歯を確認します。
その後、歯を分割して少しずつ取り除くこともあります。無理に引っ張ることはなく、患者さんへの負担をできるだけ減らすよう配慮されています。

③ 抜歯・止血

歯を抜いた後は、出血を止めるためにガーゼを噛んで圧迫します。
切開を伴った場合は、歯ぐきを縫合して傷口を閉じます。

親知らずの抜歯前は、多くの方が不安を感じるものです。
しかし、実際には処置中の痛みはしっかり麻酔で抑えられますし、治療中も歯科医師やスタッフが声をかけながら進めます。

抜歯後の注意点と回復の流れ

抜歯直後は、麻酔の影響で2~3時間ほど感覚が鈍くなっています。
この間に食事をすると頬の内側を噛んでしまうことがあるため、麻酔が完全に切れてから食べるようにしましょう。

また、当日は次のような点に注意が必要です。

  • 出血を早く止めるため、当日は強いうがいを避ける
  • 熱い食べ物や飲み物は控える
  • アルコールや激しい運動は避ける
  • お風呂につからずシャワーのみにする

痛みや腫れは、通常1~3日ほどで落ち着いてきます。腫れが強い場合は冷やしすぎないよう、清潔なタオルで軽く冷やす程度にします。

また、縫合した場合は1週間後くらいに抜糸を行います。経過が順調であれば、1~2週間で日常生活にほぼ支障がなくなります。

通常の抜歯との違い

親知らずの抜歯は、他の歯を抜く場合と比べて手順・時間・リスクが大きく異なります。
ここでは、主な違いをわかりやすく整理してみましょう。

項目通常の抜歯親知らずの抜歯
位置目で見える位置にあり、器具でつかみやすい奥にあり、器具が届きにくい
形・向きまっすぐ生えていることが多い横向き・斜め・埋伏など様々
処置方法つかんで抜くだけのことが多い歯ぐきの切開・骨の削除・分割が必要なことも
時間数分〜10分程度30〜60分程度
腫れ・痛み軽度で済むことが多い数日間腫れや痛みが続く場合も
画像検査レントゲンのみCT撮影で神経や骨の位置を確認することが多い
リスク比較的少ない下歯槽神経や上顎洞への影響リスクがある

つまり、親知らずの抜歯は「小手術に近い処置」といえるでしょう。
その分、術前の検査と丁寧な計画がとても重要になります。

痛みの感じ方と対処法

麻酔中は痛みを感じませんが、
麻酔が切れたあとにズキズキとした痛み鈍い違和感が出ることがあります。
この痛みは通常、3日~1週間程度で落ち着きます。処方された痛み止めを飲むことで十分にコントロールできます。

もし抜歯後2〜3日たっても強い痛みが続く場合や、
口を開けにくい・熱が出るなどの症状があれば、
「ドライソケット」などの合併症が起きている可能性があるため、
早めに歯科医院に相談しましょう。

抜歯後は、2〜3日ごとに少しずつ症状が軽くなっていくのが一般的です。
1週間以上経っても痛みや腫れが強い場合は、傷口の治りが遅れている可能性があるため、
我慢せずに歯科医院を再受診しましょう。早めの対応で重症化を防ぐことができます。

まとめ

親知らずの抜歯は、きちんと麻酔を行い、丁寧な手順で進めれば大きな痛みなく終えられる処置です。
また、事前の診査で歯や神経の位置をしっかり確認することで、合併症のリスクも最小限に抑えられます。

「怖い」「痛そう」と不安に感じる方も多いですが、実際に体験された患者さんの多くは「思っていたよりずっと楽だった」と話されています。
気になる症状がある場合は、放置せずに一度歯科医院で相談し、最適な治療のタイミングを確認してみましょう。

親知らずの抜歯は、一時的な処置ですが、将来の口腔トラブルを防ぐ大切なステップでもあります。
安心して治療を受け、健康な口元を保ちましょう。