咬筋力を測るとは?
咬筋力を測るってどういうこと?
皆さんは、歯医者さんで「噛む力が強いですね」と言われたことはありませんか?あるいは「歯ぎしりをしていませんか?」と質問された経験がある方もいるかもしれません。実はその背景には「咬筋力(こうきんりょく)」という考え方があります。咬筋力とは、噛むときに働く筋肉の力のことです。この力を測ることで、歯や顎の健康状態を把握し、将来のトラブルを予防することができます。
今回は、「咬筋力を測るってどういうこと?」というテーマで、咬筋力の意味や測定方法、そしてその結果をどう活かしていくのかを紹介していきます。
咬筋力とは?
「咬筋(こうきん)」という筋肉をご存じでしょうか。耳の前から頬の奥にかけてある筋肉で、ものを噛むときに大きな力を発揮する重要な筋肉です。食事のときに使うのはもちろんですが、歯ぎしりや食いしばりのときにも強く働きます。
この咬筋の力が「咬筋力」です。咬筋力が強すぎると歯や顎に負担がかかり、歯が割れたりすり減ったりするリスクが高まります。逆に弱すぎると、食事をしっかり噛めず、栄養吸収や消化に影響が出ることもあります。つまり、咬筋力は強ければ良いというものではなく、バランスが大切なのです。
なぜ咬筋力を測る必要があるのか?
歯科で咬筋力を測るのには、いくつか大切な理由があります。
- 歯ぎしりや食いしばりのチェック
夜寝ている間に歯ぎしりをしている人は多く、自分では気づきにくいものです。咬筋力を測ることで、どれくらい強い力がかかっているのかを知ることができます。 - 補綴物(詰め物や被せ物、インプラント)の耐久性を考える
咬筋力が強い人は、治療した歯が壊れやすい傾向にあります。そのため、治療を長持ちさせるための工夫が必要になります。 - 顎関節症や知覚過敏のリスクを確認
強い噛む力は顎の関節に負担をかけ、口を開けにくくなったり痛みを感じたりする「顎関節症」の原因となります。さらに、歯が削れて知覚過敏を悪化させることもあります。 - 将来のトラブルを予防する
若いうちはトラブルが出なくても、咬筋力が強い人は年齢とともに歯の破折や歯周病の悪化につながりやすいことが分かっています。定期的に測定しておくと、早めにリスクを把握し、対策を講じることができます。
こうした理由から、歯科医院で咬筋力を測ることはとても重要なのです。
咬筋力の測定方法
では、具体的にどのように咬筋力を測るのでしょうか。
1. 専用の機器を使う方法
歯科医院では専用機器を使って、実際に噛む力を数値で測定することができます。センサーをかんだり、センサーを筋肉に貼り付けたりして、どのくらいの力がかかっているかが客観的に測ることができます。
2. 歯の状態から推測する方法
機器を使わなくても、歯科医師が歯のすり減り具合、詰め物の壊れやすさ、舌や頬に歯の跡がついていないかなどを見て判断することもあります。これは簡易的ですが、日常診療でよく行われている方法です。
3. 自己チェック
自分でもある程度の目安を知ることができます。例えば——
- 朝起きたときにあごがだるい
- 歯にヒビが入っている
- 詰め物や被せ物がよく取れる
- 舌や頬に歯の跡がついている
こうしたサインがある場合は、咬筋力が強い可能性があるため、歯科でのチェックをおすすめします。
測定結果の活かし方
咬筋力を測ったあとは、その結果をどう活かすかが大切です。
- 咬筋力が強すぎる場合
歯ぎしりや食いしばりによるダメージを防ぐため、就寝時に「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを使用することがあります。これにより、歯や顎への負担を和らげることができます。また、ストレスをためないよう生活習慣を工夫することも大切です。 - 咬筋力が弱い場合
高齢の方や噛む力が低下している方では、柔らかい食事ばかりで噛む筋肉が弱ってしまうことがあります。その場合は、噛む回数を意識して食事をしたり、口の周りの筋肉を鍛える体操を取り入れるとよいでしょう。特に「ガムをかむ」「口を大きく開けて発声する」といったシンプルな習慣も有効です。
咬筋力を知ることで「ただの数値」ではなく「自分に合った予防策やトレーニング」が見えてきます。
まとめ
咬筋力を測るというのは、単に噛む力の強さを知るだけではありません。
- 歯ぎしりや食いしばりの有無を確認
- 歯や顎関節の将来的なリスクを予測
- 治療の方法やケアの方向性を決める
こうした目的があるのです。
また、咬筋力を測ることで「普段の生活習慣を見直すきっかけ」になります。強く噛みすぎている人はリラックスを意識し、噛む力が弱い人は噛む回数を増やす工夫をするなど、自分に合った対策がとれるのです。
自分の咬筋力を知ることは、歯を守るための第一歩です。歯や顎に不安を感じる方、歯ぎしりや食いしばりを指摘されたことがある方は、一度歯科医院で咬筋力のチェックを受けてみてはいかがでしょうか。
健康な歯と快適な生活を守るために、咬筋力を知ることはとても大切です。