歯周病の治療は、なにをするの?

歯周病は「治す」病気ではなく、「進行を抑える」病気です。そのため、治療が完了した後も定期的なメンテナンスが不可欠です。継続的な管理が、再発を防ぎ、健康な歯ぐきを保ち続ける鍵となります。
今回は、歯周病の進行度に応じた治療と管理方法について、非外科治療から進行度に応じた外科的処置それぞれの流れをご紹介します。
目次
歯周病の進行段階と治療の基本方針
歯周病の治療は、その進行度に応じて治療方法や期間が変わってきます。軽度の「歯肉炎」であれば比較的短期間のケアと比較的少ない通院回数で改善が見込めます。しかし、中等度〜重度の「歯周炎」に進行している場合は、段階的な治療と長期的な管理が必要です。
治療の流れは一般的に以下の流れで行われます。
- ①検査・診断
- ②プラークコントロール指導(ブラッシング指導)
- ③スケーリング・ルートプレーニング(非外科処置)
- ④再評価と再治療
- ⑤外科的治療(必要な場合)
- ⑥メンテナンス(SPT:Supportive Periodontal Therapy)
それぞれの治療段階について詳しく見ていきましょう。
初期段階:プラークコントロールとスケーリング
● プラークコントロールの指導
歯周病の最大の原因は、歯と歯ぐきの境目に溜まったプラーク(歯垢)です。そのため、治療の第一歩は患者さん自身による「正しい歯みがき」が基本となります。歯科衛生士によるブラッシング指導や、フロス・歯間ブラシの使用方法など、個々の患者に合わせたセルフケアの指導が行われます。
● スケーリング(歯石除去)
歯垢が固まると「歯石」となり、歯ブラシでは除去できなくなります。スケーリングとは、歯面に付着した歯石やプラークを、超音波スケーラーや手用スケーラーなどを使って除去する処置です。スケーリングにより歯周病の進行を抑えることができます。
中等度以上の歯周炎にはルートプレーニング
スケーリングだけでは歯周ポケットの奥に残った歯石や、細菌がつくる「バイオフィルム」まで除去できない場合があります。このようなケースでは、ルートプレーニングという処置を行います。
ルートプレーニングとは?
ルートプレーニングは、歯の根面を滑らかにし、付着した歯石や細菌を徹底的に除去する処置です。局所麻酔を使用して行われることが多く、1〜数回に分けて処置を進めます。
● 治療期間の目安
軽度の症例であれば1〜2回で完了しますが、中〜重度では4〜6回、1〜2ヶ月にわたって行われる場合もあります。処置後、炎症の改善度を確認するための「再評価」が行われ、治療方針を見直します。
再評価と進行度の判断
非外科治療(スケーリング・ルートプレーニング)後、歯周ポケットの深さや歯ぐきの出血の有無、歯の動揺などを再評価します。ここで症状が大きく改善していれば、外科的治療を避けることも可能です。
しかし、以下のような場合は外科的治療が検討されます。
- ポケットの深さが依然として5mm以上ある
- 歯ぐきの炎症が残っている
- プラークや歯石の除去が不十分だった
外科的治療の種類と目的
歯周病の外科治療は、非外科的治療だけでは改善が難しい歯周病に対して行われます。目的は主に以下の3点です。
- 深い歯周ポケットの除去
- 視野を確保して歯根面の清掃を徹底する
- 歯周組織の再生や修復
代表的な外科的治療は以下の通りです。
フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)
歯ぐきを切開して歯根面を露出させ、奥深くの歯石を直接目で確認しながら除去する手術です。その後、歯ぐきを元に戻して縫合します。再発防止のためには非常に効果的です。
歯周組織再生療法
エムドゲインやGTR法などの再生材料を用いて、失われた歯周組織の回復を促す治療です。骨の吸収が進んだ重度歯周炎で適用されることがあります。
● 治療期間の目安
外科治療は1本あたり30分〜1時間程度。複数部位の場合は、数回に分けて行います。術後1〜2週間で抜糸をし、その後は経過観察に移行します。
メンテナンスと長期管理の重要性
SPT(Supportive Periodontal Therapy、サポーティブペリオドンタルセラピー)
SPTとは、治療後、安定した状態になった歯周病に対して、更に継続的に行っていく支援ケアのことをいいます。内容としては、再発を防ぐため、3〜6ヶ月に1回の定期検診で口腔内のチェックとクリーニングを行います。セルフケアが不十分になりやすい高齢者や、リスク因子を多く抱える方には、より頻度の高いケアや管理が推奨されています。
段階的・継続的な治療と予防がカギ
歯周病の治療は、最終的には定期的な診察と正しいセルフケアが不可欠です。そして、歯周病と上手く付き合いながら、健康な歯ぐきを保ち続けましょう。これは全身の健康維持にもつながります。
定期的な検診に通院し、いつまでも自分の歯でしっかり噛み、おいしく食事を楽しめるように、今からできることを積み重ねていきましょう。健康な口腔環境は、豊かな人生を支える重要な土台です。