メンテナンスと歯周病治療後のメンテナンスの違いとは?

歯周病は「治療が終わったらそれで安心」という病気ではありません。実は、治療後のメンテナンス(定期検診)こそが、歯周病を再発・進行させずに健康なお口を保つための鍵となります。
今回は、歯周病治療後に欠かせないメンテナンスの内容や、定期検診・プロフェッショナルケアの重要性について詳しく解説します。
目次
歯周病は“治る”病気ではなく、“進行を止める”病気
歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが細菌によって少しずつ破壊されていく病気です。一度破壊された組織は、基本的には自然に元に戻ることはありません。そのため、歯周病の治療の目的は「失われた歯周組織を取り戻すこと」ではありません。「これ以上悪くならないように進行を食い止めること」なのです。
治療によって炎症が落ち着いても、原因となるプラーク(歯垢)や歯石が再びたまれば、症状は再発しやすくなります。そのため、治療後こそが本当のスタートラインとも言えるのです。
歯周病の再発リスクは高い
歯周病は、非常に再発しやすい病気です。たとえ一時的に症状が落ち着いても、時間が経つと再び細菌が増え、炎症が再発するケースは多く見られます。
特に、以下のような方は再発リスクが高いとされています:
- 喫煙習慣がある方
- 糖尿病などの全身疾患を持っている方
- 口腔ケアが不十分な方
- ストレスや睡眠不足の多い生活をしている方
これらのリスク要因を持つ方ほど、定期的なチェックとメンテナンスが重要になります。
サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)
SPT(Supportive Periodontal Therapy)
歯周病安定期治療(SPT)は、歯周病の再発を防ぎながら、安定した状態を維持するための治療的メンテナンスです。「治療」と「予防」の中間に位置する管理プログラムです。
歯周病治療を受けて炎症が収まり、一定の安定が得られた後も、まだ歯周ポケットが深かったり、骨吸収が進行していたりする場合があります。こうした「治癒ではないが安定している状態」に対して、SPTが実施されます。
SPTの主な内容:
- 歯周ポケットの定期的な検査
- 歯石の除去(スケーリング)
- 必要に応じたルートプレーニング(根面の清掃)
- プラークコントロールの確認
- ブラッシング指導
- レントゲンなどによる骨の状態の確認
メンテナンスとは何をするの?
SPT も終わった歯周病治療後のメンテナンスとは、お口の健康状態を維持するための定期的なケア(定期検診)のことです。具体的には以下のような内容が行われます。
プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
歯科衛生士が専用の器具を使って歯の表面を徹底的に清掃します。毎日の歯みがきでは取り除けない歯石やバイオフィルム(細菌の膜)を除去し、虫歯や歯周病を予防することが目的です。
PMTCの対象は主に「健康な歯周組織を維持するための予防処置」です。治療後の軽度なメンテナンスにも行われる場合があります。しかし、歯周病が進んでいる場合には、より専門的なケア(SPT)が必要になります。
SPTとの違い:
項目 | PMTC | SPT |
対象 | 歯周病予防を目的とした健康な人 | 治療後の歯周病安定期の人 |
処置内容 | 主に歯の表面の清掃とポリッシング | 歯周ポケットの管理、再発予防処置 |
実施者 | 歯科衛生士中心 | 歯科医師や歯科衛生士の連携で実施 |
診療目的 | 予防中心 | 管理と治療中心 |
保険適用の有無 | 状況により自費の場合あり | 基本的に保険診療(条件あり) |
歯周ポケットの検査
「歯周ポケット」の深さと出血から、歯周病の再発や進行の有無を確認します。
歯みがき指導
自宅でのブラッシングができていないと、いくら治療をしても再発してしまいます。個々の磨き残しが多い部位に合わせた方法や、歯間ブラシ・フロスの使い方などのアドバイスを受けられます。
メンテナンスの頻度はどのくらい?
メンテナンスの頻度は、3ヶ月〜6ヶ月に1回の受診が推奨されています。歯周病の進行度が高い方やリスクの高い方は、月1回〜2ヶ月に1回の短いスパンでの来院が望ましいこともあります。
この頻度を守ることで、仮に歯周病が再発しそうになっても早期に発見でき、軽度の段階で対応できます。
メンテナンスを怠るとどうなる?
最終的には歯を失ってしまうリスクが高まります。
一度抜けてしまった歯は、インプラントや義歯などで補うことはできますが、自分の歯に勝るものはありません。そして、インプラントもどんな状態でも治療ができるというわけではありません。だからこそ、自分の歯を守るために、治療後のケアを怠らないことが何より大切なのです。
メンテナンスは“歯を守る投資”
歯周病治療後のメンテナンスは、「もう一度治療を繰り返さないための予防」です。治療費や通院の負担を考えても、定期的に通うほうが時間的にも経済的にも効率的です。
また、歯周病は全身の健康とも深く関係しており、心疾患・糖尿病・認知症などとの関連も指摘されています。お口の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながるのです。
メンテナンスで「歯周病ゼロ」を目指そう
歯周病は一度かかると完治が難しく、再発しやすい病気です。だからこそ、治療後のメンテナンスが何より重要です。歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアと、毎日の正しいセルフケアを両立することで、歯周病の再発を防ぎ、歯の健康を長く保つことができます。
いつまでも自分の歯でしっかり噛んで、おいしく食事ができるように。将来の健康のためにも、治療後のメンテナンスを習慣にしていきましょう。