ママができる、赤ちゃんの虫歯予防

 子どもの虫歯の予防では、①虫歯の原因になるミュータンス菌に感染させないこと(ママからの感染の予防)、②ミュータンス菌の数を減らし、悪さをしない善玉菌を増やすこと(ママの定期的メンテナンス)が大切です。

①について、フィンランドの研究者サーダリンは、興味深い研究をしています。

歯科検診に参加した妊婦の口の中の細菌レベルを調べて、ミュータンス菌がたくさんいる妊婦を選び出し、出産後、赤ちゃんが3ヵ月~2歳の間、お母さんにキシリトールガムを噛んでもらい、子どもの口の中のミュータンス菌の数を調べたのです。子どもにはキシリトールガムを噛ませていませんが、お母さんがキシリトールガムを噛んでいたグループでは、子どもの口からミュータンス菌は少ししか見つかりませんでした。お母さんがガムを噛むのをやめたあとも調査を続けていますが、やはりガムを噛んだ母親のグループの子どもたちは、ミュータンス菌が少ないままでした(母親がガムを噛んでいたグループでのミュータンス菌の定着率は、3歳までで全体の27%、6歳までで51%)。

キシリトールガムがお口の中の金を減らすことは、すでに明らかになっています。したがって、お母さんのお母さんのお口の中のミュータンス菌のレベルを低くしておけば、子どもに感染しにくくなり、虫歯ができにくくなると考えられます。

この研究以外にも、お母さんの口の中のミュータンス菌を減らす予防処置によって、子どもの口の中の細菌に大きな差が生じたという研究があります。この研究では、3歳で実験を終了した後も、その差は開いたままでした。つまり、予防処置によってミュータンス菌が減り、代わりにいわゆる善玉菌が増えたため、子どもがミュータンス菌に感染しにくくなったものと思われます。子どもの虫歯の数にも、当然大きな差が出ています。

乳児期は、赤ちゃんも母親も困難がいっぱい

離乳食を作るのが大変?困難と言っても、そういう困難ではありません。

離乳期を通じて、赤ちゃんは、①飲む→食べる、②呼吸しながら飲む→呼吸を止めて飲み込む、③いつもだらだら飲む→規則的に食べる、と3つの大きな切り替えをしなければならないのです。離乳期は〈吸って飲む〉動作と、食べ物を〈飲み込む〉動作(吸啜と嚥下)を両方遣いする時期なのです。次第に、口の奥とのどとの距離ができ(喉頭下降)、この切り替えが進みます。

切り替えが上手にできないと、①まる飲みになってしまう、②むせやすい、③だらだら飲みがいつまでも続くと虫歯になりやすい、などと苦労します。そういう意味で離乳食は、とても重要な学習の機会なのです。

ここでも「比べ保育」は大敵です。他の赤ちゃんと比べるのではなく、その赤ちゃんの発育に合わせることが大切。離乳後期の固形食を急ぐと、赤ちゃんは口に入れたものを舌で押し出します。それでもお母さんが無理して口の中に押し込むと、赤ちゃんはまる飲みする以外にありません。

離乳期が終わると、《感染の窓》が開きます。《感染の窓》が開いてからも、だらだら食べる生活が続いていると、虫歯の大きなリスクになります。

離乳期のスプーン

離乳食を始める時には、それが栄養のためではなく、食べる楽しみのものであるということちょっとだけ意識してみてはどうでしょう。離乳期は食べ物を噛んでゴックンと飲み込む(咀嚼と嚥下)ことを学習する時期ですが、もうひとつ食べ物を加え、微妙な構音を獲得するために唇(口唇)を発達させる時期でもあります。

赤ちゃんのうわくちびるは、厚く富士山のような山形をしています。うわくちびるを使うようになると次第に薄く平坦になっていきます。離乳食用の浅井¥いスプーンに小間切れのお豆腐をのせて、したくちびるにのせてみましょう。はじめはこのスプーンに上手く反応を捉えることができないかもしれません。そこにうわくちびるが閉じれば、スプーンにのっているお豆腐を捉えることができます。生後6ヵ月くらいになると、うわくちびるで食べ物を取り込むことができるようになります。こうなると、舌でつぶせるくらいの離乳食が上手に食べられるようになります。舌でつぶした食べ物をひとまとめにすることも覚えます。この時期に、食べ物を舌の上にのせてしまったのでは離乳食の楽しみは半減します。

前歯が生えたら、したくちるにのせたスプーンの上のバナナを前歯でかじり取り、それを上あごでつぶせるようになります(生後8か月頃)。丸みのあるスプーンが使えるようになりますので、歯茎でつぶせる硬さに挑戦できます。上あごに押し付けてつぶしていた物が、1ヵ月もすると歯茎で噛むようになります(生後9ヵ月頃)。この時期になったら、噛む楽しみが加わります。

このような赤ちゃんの発達を無視して口の中にスプーンを何杯も押し込んでしまったのでは、どんなにおいしい離乳食も単なる栄養補給に終わってしまいます。

スプーンの位置を工夫するだけで、赤ちゃんは、次第に口唇を使ってくわえ、その温かみや硬さを感じて舌をそれに連繋させます。スプーンを口唇の上に運ぶ前に、食べ物の匂いを感じ目で見て、言葉がけがあったら、それは最高です。期待、考え、口唇で食べ物の温かさを感じて歯で硬さを感じ、舌で味わって食べることができたら、それはもう本当に立派な食事のスタートです。