子どもの口腔発達に大切な生活習慣とは?

「家でできることはありますか?」
小児歯科や小児矯正の相談で、保護者の方からよくいただく質問です。
子どものお口の発達には、姿勢・呼吸・食事・噛む習慣など、毎日の生活習慣が深く関係しています。
大切なのは、完璧に頑張ることではなく、日常生活の中で少しずつお口を使う機会を増やしていくことです。
今回は、家庭でできる口腔発達サポートについてご紹介します。
目次
姿勢を整える
口腔発達というと、お口の中だけをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、実は姿勢もお口の発達に深く関係しています。
姿勢が崩れると、首やあごの位置が変わり、口が開きやすくなることがあります。
特に猫背やうつむき姿勢が続くと、下あごが後ろに下がりやすくなり、自然と口がぽかんと開きやすくなることがあります。
口が開いた状態が続くと、口呼吸につながりやすくなります。
さらに、口呼吸が続くことで舌の位置が下がり、お口ぽかんや歯並び、あごの成長に影響することもあります。
特に注意したいのが、食事中やテレビ・タブレットを見る時の姿勢です。
食事中に足が床についていなかったり、背中が丸まっていたりすると、体が安定しにくくなります。
体が安定していないと、しっかり噛む・飲み込むといった動きがしづらくなることがあります。
家庭で出来る工夫
- 足が床につくようにする
- 足が届かない場合は足台を使う
- 背中を丸めすぎない
- 食事中は体を起こす
- 椅子や机の高さを見直す
- 画面を見る時は顔が下がりすぎないようにする
姿勢が安定すると、噛む・飲み込む・鼻で呼吸する動きもしやすくなります。
食事中の姿勢やタブレットを見る時の姿勢など、毎日の生活の中で気づきやすいところから見直してみましょう。
鼻呼吸を意識する
お口の発達には、鼻で呼吸することも大切です。
本来、人は鼻で呼吸するようにできています。
鼻には、吸い込んだ空気を温めたり、加湿したり、ほこりや細菌などを入りにくくしたりする働きがあります。鼻呼吸は、お口や体を守るためにも大切な役割をしています。
一方で、口呼吸が続くと、常に口が開きやすくなります。
口が開いた状態が習慣になると、舌の位置が下がりやすくなり、お口ぽかんや歯並び、あごの成長に影響することがあります。
本来、舌は上あごに軽くついているのが自然な位置です。しかし、口呼吸になると舌が下がりやすくなり、上あごへの刺激が少なくなることがあります。その結果、あごの成長や歯が並ぶスペースに影響する可能性があります。
また、口呼吸はお口の乾燥にもつながります。お口の中が乾燥すると、唾液の働きが弱くなり、虫歯や歯肉炎、口臭の原因になることもあります。
まず普段の家庭での様子をチェック
- 口を開けてテレビを見ている
- 寝ている時に口が開いている
- 朝起きると口が乾いている
- 唇が乾燥しやすい
- 鼻づまりが多い
- いびきをかくことがある
このような様子がある場合は、口呼吸になっている可能性があります。
ただし、「口を閉じなさい」と声をかけるだけでは改善が難しいこともあります。鼻づまりやアレルギー性鼻炎がある場合は、本人が鼻で呼吸したくても難しいことがあるためです。
歯科では、お口ぽかんや口呼吸の有無、舌の位置、歯並び、あごの発達などを確認します。
必要に応じて、耳鼻咽喉科と連携しながら、お口と呼吸の両面からサポートしていきます。
鼻呼吸は、意識してすぐに変わるものではありません。日中に口が開いていないか、寝ている時に口呼吸になっていないかなど、まずは小さなサインに気づくことが大切です。
食事でお口を育てる
毎日の食事は、お口を育てる大切な時間です。
食事では、食べ物を噛むだけでなく、唇を閉じる、舌を動かす、飲み込む、鼻で呼吸するなど、さまざまなお口の機能を自然に使っています。
つまり食事は、栄養を摂るだけでなく、お口周りの筋肉やあごの発達を促す大切な機会でもあります。
近年は、昔と比べて柔らかい食べ物が増えています。ハンバーグ、カレー、パン、麺類など、食べやすいものは忙しい家庭でも取り入れやすく、子どもにも人気があります。
もちろん、柔らかい食事が悪いわけではありません。
しかし、柔らかいものばかりが続くと、噛む回数が少なくなり、あごやお口周りの筋肉を使う機会が減ってしまうことがあります。
噛む回数が少ないと、あごへの刺激も少なくなります。成長期の子どもにとって、しっかり噛むことは、あごの発達や歯が並ぶスペースづくりにも関係しています。
また、よく噛むことで唾液の分泌も促されます。唾液には、お口の中をきれいに保ったり、虫歯を予防したり、食べ物の消化を助けたりする働きがあります。
硬いものを食べさせた方がいい?
大切なのは、硬いものを無理に食べさせることではありません。
年齢や発達に合わせて、「自然と噛む回数が増える食材」を少しずつ取り入れることです。
例えば、
- おにぎり
- れんこんやごぼうなどの根菜類
- 肉類
- きのこ類
- 海藻類
- りんごなどの果物
などは、噛む回数が増えやすい食材です。
また、食材を小さく切りすぎず、少し噛みごたえを残すことも工夫のひとつです。
ただし、年齢や噛む力に合わない大きさや硬さは危険な場合もあるため、
無理のない範囲で取り入れましょう。
食事は毎日のことだからこそ、お口の発達をサポートしやすい時間です。
無理なく、できる範囲で「噛む機会」を増やしていくことが、健やかなお口の成長につながります。
噛む習慣をつける
しかし、「よく噛みなさい」と声をかけても、子どもにとっては何をどうすればよいのか分かりにくいことがあります。
大人は「しっかり噛む」という意味が分かっていても、子どもにとっては、何回噛めばよいのか、どんなふうに食べればよいのかがイメージしにくい場合があります。
そのため、噛む習慣をつけるには、声かけだけでなく食事環境を整えることも大切です。
例えば、
- 一口を大きくしすぎない
- 飲み物で流し込まない
- 急いで食べない
- テレビや動画を見ながら食べない
- 左右どちらかだけで噛んでいないか見る
といったことを意識してみましょう。
飲み物で流し込む
食事中に飲み物で流し込む癖があると、食べ物を十分に噛まないまま飲み込んでしまうことがあります。まずは、口の中の食べ物をしっかり噛んでから飲み込む習慣をつけることが大切です。
ながら食べ
テレビや動画を見ながら食べていると、食べることへの意識が薄くなり、噛む回数が少なくなることがあります。
食事の時間は、できるだけ食べ物の味や食感に意識を向けられる環境にしてあげるとよいでしょう。
よく噛むことで、あごの成長や唾液の分泌、お口周りの筋肉の発達をサポートできます。
唾液がしっかり出ることで、食べ物の消化を助けたり、お口の中を清潔に保ったりする働きも期待できます。
ただし、「30回噛みなさい」と回数だけを決めてしまうと、子どもにとって負担になることもあります。
無理に回数を数えるよりも、
「この食材はシャキシャキしているね」「よく噛むと甘くなるね」
など、食材の形や食感を楽しむことから始めると続けやすくなります。
噛む習慣は、特別なトレーニングではなく、毎日の食事の中で少しずつ身につけていくものです。焦らず、できることから取り入れていきましょう。
お口遊びを取り入れる
お口の発達をサポートするには、遊びの中でお口周りを使うこともおすすめです。
子どもにとって、トレーニングとして取り組むよりも、遊びながら行う方が楽しく続けやすいことがあります。
お口周りには、舌・唇・頬など、さまざまな筋肉があります。
これらの筋肉は、食べる、飲み込む、話す、呼吸する、口を閉じるといった動きに関係しています。
そのため、遊びの中でお口周りを動かすことは、口腔発達のサポートにつながります。
例えば、
- シャボン玉
- 風車を吹く
- にらめっこ
- あいうべ体操
などは、唇や頬、舌、呼吸を使うきっかけになります。
シャボン玉・風車を吹く
シャボン玉や風車を吹く遊びは、息をコントロールする練習になります。
唇をすぼめたり、息をゆっくり吐いたりする動きは、お口周りの筋肉を使うよい機会です。
にらめっこ・あいうべ体操
にらめっこや頬をふくらませる遊びは、表情筋や頬の筋肉を楽しく使うことができます。親子で一緒に行うと、子どもも遊び感覚で取り組みやすくなります。
また、あいうべ体操のように、口を大きく動かす体操も、お口周りの筋肉を意識するきっかけになります。ただし、無理に大きく動かしたり、長時間続けたりする必要はありません。
大切なのは、短い時間でも楽しく続けること
「できたね」「上手だね」と声をかけながら、親子で一緒に取り組むことで、
子どもにとって前向きな習慣になりやすくなります。
お口遊びは、家庭で気軽に取り入れやすいサポート方法のひとつです。毎日の生活の中で、遊びながらお口を使う機会を少しずつ増やしていきましょう。
まとめ
子どものお口の発達は、毎日の生活習慣の中でもサポートできます。
姿勢を整えること、鼻呼吸を意識すること、よく噛む食事やお口遊びを取り入れることは、
家庭でも始めやすいポイントです。
すべてを完璧に行う必要はありません。まずは、できることから少しずつ取り入れていきましょう。
口呼吸やお口ぽかん、噛み方、飲み込み方などで気になることがあれば、お気軽にご相談ください。