抜歯前にCTは撮らないといけないの?
親知らずの抜歯について説明を受けたときに、「CT撮影をして確認しましょう」と言われた経験はありませんか?
レントゲンだけではダメなの?と思われる方もいるかもしれません。しかし、実は親知らずの位置を正確に把握するために、CT撮影はとても重要な役割を果たします。
特に下の親知らずは、あごの中を通る太い神経「下顎管(かがくかん)」に近い場所にあることが多く、神経の位置を正確に把握することは、抜歯の安全性を大きく左右します。
今回は、CTによって何がわかるのか、どう安全性が高まるのかについて、解説します。
目次
下顎管とは?なぜ注意が必要なの?
下あごの骨の中には、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という太い神経が通っています。この神経は、唇やあごの感覚を司っており、歯の根の近くを走っています。そして、この神経が通るトンネルのような構造を「下顎管(かがくかん)」といいます。
下の親知らずが生えている場所は、この下顎管に非常に近いケースが多くあります。そのため、抜歯の際に神経を傷つけてしまうと、下唇やあご周りにしびれが出る可能性があるのです。場合によっては、一生しびれが残ることもあります。
神経を守るためには、「どこに、どれくらい近いのか」を立体的に正しく知ることが大切。
そこで活躍するのが、CT撮影です。
レントゲンとCTは何が違う?
親知らずの診断に使われる一般的なレントゲン(パノラマX線)は、歯全体の位置関係を見るのには適しています。しかし、レントゲンは平面的な画像となるため、「神経までの距離」や「親知らずが骨にどれくらい埋まっているのか」を正確に判断するには限界があります。
🔍 CTでわかること
| CTでわかる情報 | レントゲンでは難しい理由 |
| 神経と根の距離がミリ単位でわかる | 平面画像のため重なって見える |
| 歯が骨にどの方向に埋まっているか | 深さや角度までは詳しく見えない |
| 歯根の形(曲がっている・分かれているなど) | 複雑な形状は映りにくい |
CTは立体的な画像が得られるため、親知らずの形や神経との位置関係を3Dで確認することができます。これによって、より安全な抜歯計画を立てることができ、不要なリスクを避けられるのです。
CT診断が安全につながる理由
親知らずの抜歯では、「どの方向から抜歯するか」「歯を分割する必要があるか」など、事前の計画によって処置の難易度や時間が大きく変わります。
📌 CT診断によって得られる安全性
- 神経を避けた抜歯計画ができる
- 必要な場合のみ骨や歯の分割を行うため、無駄に削らない
- 術後の腫れや痛みを少なくできる
- 合併症(しびれ・出血など)のリスクを減らせる
つまり、CTは“安全で痛みや腫れの少ない抜歯につながる”大切な検査なのです。
CTが必要になるのはどんな場合?
すべての親知らずでCTが必要になるわけではありません。以下のような場合に、特にCT撮影が推奨されます。
🦷 CT撮影が必要なケース
- 親知らずが埋まっている(埋伏歯)
- 横向き・斜めに生えている
- 神経に近い、または重なって見える
- 歯根が複雑に曲がっている疑いがある
- 強い痛みや腫れを伴う炎症がある
症状や状態を見て、担当の歯科医師が判断します。
CT撮影の安全性について
「CTは放射線量が心配…」という声を聞くことがあります。しかし、歯科用CTの放射線量は、医科で使われるCTよりも小さいことが多く、検査の安全性は確保されています。
📌 歯科用CTの特徴
- 必要な部分だけ撮影できる → 余計な被曝がない
- 撮影時間が短い → 数十秒で完了
- 妊婦の場合も、状況に応じて防護しつつ慎重に判断
メリットと必要性を考えると、安全・安心な検査といえるでしょう。
まとめ:CTは抜歯の成功を左右する重要な検査
親知らずは、歯の中でも生え方が複雑で、個人差が大きい歯です。そのため、レントゲンだけでは判断できない部分まで把握するために、CT撮影が必要となることがあります。
CTを撮影する目的は、ただ画像を見るためではなく、安全に抜歯するための“準備”として欠かせないステップです。
親知らずの抜歯を控えている方、抜くべきか悩んでいる方には、まず一度歯科医院で詳しい検査を受けてみることをおすすめします。きちんと診断することで、余計な痛みやトラブルを避けられ、より安心して治療を受けることができます。
不安や疑問があれば、遠慮せず、担当の歯科医師に相談してみましょう。