抜歯後に強い痛みが続く?

親知らずを含め、抜歯をした後に「思ったより痛みが強い」「ズキズキして眠れない…」といった症状が続くことがあります。その原因のひとつがドライソケットという抜歯後の代表的な合併症です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、正しく理解し、予防と適切な対処を行うことで多くの場合は改善が可能です。
今回は、ドライソケットとは何か、なぜ起こるのか、患者さんができる予防策や、もし起きてしまったときの対応についてわかりやすく解説します。

ドライソケットとは?

通常、歯を抜いたあとの穴(抜歯窩)には血餅(けっぺい)と呼ばれる血のかたまりができ、傷口を保護する役割を果たします。
この血餅がしっかりと安定していることで、骨が外からの刺激から守られ、痛みも抑えられます。

しかし、何らかの原因で血餅が取れてしまったり、うまくできなかったりすると、抜歯窩の骨がむき出しの状態になります。
この状態がドライソケット(乾燥窩)で、非常に強い痛みを引き起こしやすく、数日経ってから痛みが悪化するのが特徴です。

どんな症状が出るの?

ドライソケットになると、次のような症状が見られます。

  • 抜歯後2〜3日してから、急に強い痛みが出る
  • 痛み止めを飲んでも、効きが悪い
  • ズキズキ、ガンガンと響くような痛み
  • 口臭が気になることがある
  • 傷口をのぞくと、白っぽく骨が見える場合がある

通常の抜歯後の痛みとは性質が異なり、とにかく「強くて長引く」というのが特徴です。

なぜドライソケットが起こるの?

血餅がうまく作られない、もしくは取れてしまう原因にはいくつか共通点があります。

● うがいのしすぎ

抜歯後は出血が気になり、つい強くうがいしたくなりますが、血餅が流れてしまいます。

● 歯ブラシや指で傷口を触ってしまう

異物感が気になるため触りたくなりますが、これも血餅が取れる原因です。

● 喫煙

タバコに含まれるニコチンが血流を悪くし、血餅の形成が妨げられます。

● ストローで飲み物を飲む

吸う動作(陰圧)によって血餅が剥がれやすくなります。

● 親知らずが埋まっている(難抜歯)

歯ぐきや骨を削る処置が必要な場合、もともとドライソケットのリスクが高くなります。

どれか1つだけでなく、いくつかの要因が重なって発症することも多いです。

ドライソケットはどれくらい続く?

痛みのピークは発症してから数日ですが、1〜2週間ほど痛みが続くこともあります。
ただし、歯科医院で適切な処置を受ければ、痛みが軽減し、治りが早くなることがほとんどです。

患者さんができる予防策

ドライソケットは「気をつければかなり予防可能」な合併症です。
次のポイントを守ることで、発症のリスクを大きく下げられます。

● 当日の強いうがいは避ける

歯みがきは大丈夫ですが、抜いた部分を強くすすぐのは控えましょう。

● 舌や指で触らない

気になっても、血餅を守るために触らないことが大切です。

● 喫煙しない(最低48〜72時間)

抜歯後の喫煙は、ドライソケットの最大のリスク要因のひとつです。

● 熱い食べ物は避ける

熱は血餅を溶かしやすいため、抜歯直後は温かい程度の食事にしましょう。

● 激しい運動・飲酒を控える

血流が活発になり、出血が増えて血餅が安定しにくくなります。

● 医師の指示を守り、処方薬をきちんと服用する

炎症予防の抗生剤や痛み止めの服用も、予防効果につながります。

もしドライソケットが起きてしまったら?

ドライソケットが疑われる場合は、我慢せずに早めに歯科医院を受診してください。
自宅では治りにくく、適切な処置が必要です。

歯科医院での主な治療は次のとおりです。

● 洗浄

傷口を優しく洗い、汚れを取り除きます。

● 鎮痛効果のある薬剤を患部に入れる

薬剤を入れることで痛みが大きく和らぎ、治りやすい環境が整います。
多くの患者さんが、「治療したその日から痛みが軽くなった」と感じます。

● 必要に応じて痛み止め・抗生剤の追加処方

症状に合わせて薬を使い分けます。

治るまでに数日〜1週間ほどかかりますが、治療を受けることで大幅に楽になります。

受診までの自分でできる痛みのセルフケア

歯科医院を受診するまでの間、次の方法で痛みを軽減できます。

  • 頬の外側を軽く冷やす(冷やしすぎは厳禁)
  • 処方された痛み止めを正しく飲む
  • 刺激物(アルコール・香辛料など)を避ける
  • 傷口側で噛まないようにする

ただし、市販薬を自己判断で大量に飲むのは危険なので注意してください。

まとめ

ドライソケットは、抜歯後に起こりやすい合併症のひとつで、血餅が失われて傷口がむき出しになることで強い痛みを引き起こします。
発症するとつらい症状が続きますが、正しい予防方法を実践することで対策ができます。

また、もし症状が出てしまった場合でも、歯科医院で適切な処置を行えば痛みは軽減し、治癒を早めることができます。

「抜歯後の痛みが思ったより強い」「2〜3日たっても痛みが悪化している」
そんなときは自己判断せず、早めに歯科医院に相談してください。

抜歯後の適切なケアを知ることは、回復を早め、快適に過ごすための大切なポイントです。