指しゃぶりは無理なくやめる

離乳期の赤ちゃんの指しゃぶりはまったく罪のないものです。一般に3歳までの指しゃぶりは気にしなくてよい、とされていますが、指しゃぶりの習慣が長期間続くと、出っ歯になったり、上下の前歯を咬み合わせたときに、隙間ができてしまう心配があります。乳歯がそろうころまでに昼間の目立った指しゃぶりはなくなりますが、3歳児の約20%は指しゃぶりの癖をもっています。子どもによっては4~5歳ごろまで指しゃぶりが続きます。この程度の指しゃぶりは、とくに心配はありません。習慣化した指しゃぶりでも保育園や幼稚園での子どもどうしの交わりの中で社会性が芽生え自然に消えていきます。4~5歳ごろの指しゃぶりについて、小児科医の多くは不安や緊張を解消する効果を重く見て、無理にやめさせるべきではないと言うでしょう。心理的な面を重く見る専門家は、親子関係の問題や遊び相手がいないのではないかと心配するかもしれめせん。小児科医は、4歳以下でも習慣化するおそれがあるとき(指ダコができているような場合)は、早めの指導をするでしょう。習慣化すると、歯ならびや咬み合わせに影響するだけでなく、発音や嚥下、口元の突出、あごの発育への影響も出てくるからです。生活のリズムを整え、外遊びをさせ、家の中でも指を使って遊ぶ機会を増やすようにします。寝つくまでの間、子どもの手を握ってあげることで、無理なく指しゃぶりは消えるでしょう。指しゃぶりの習慣は、適切な位置に舌がないことを示しているだけで歯ならびに影響が出ていなければ、自然にやめるようにすることは難しくないでしょう。口を閉じて舌先を上あごの先に位置づけると、舌は自然に上あごの中に収まるようになり、指の入る余地はなくなります。二人目の子どもが産まれると上の子が赤ちゃんのように指しゃぶりをすることがありますが、これは意識して上の子と向き合う時間をつくれば解決できるでしょう。

親指しゃぶり

永久歯が生え始めても親指を上向きに深く口の中に入れる親指しゃぶりが続くと、上あごや前歯のかたちを変形させてしまうことがあります。しゃぶり方にもよりますが、指しゃぶりを毎日長時間、長い年月にわたって、続けると上の前歯が前方に出てきます。永久歯が生えても続けている場合には、歯ぐき全体が前に突出してきます(上顎前突)。また口を閉じても上下の前歯の間に隙間があいた状態(開咬)になります。下あごは押し下げられ、舌の位置が下がるために上あごのしれつが狭くなります。あごが横にずれてしまうこともあります。顔や口元がへんけいするだけでなく、発音がうまくできす(構音障害)、口呼吸になることが多くなります。また、上下の歯の間に隙間があいているため、ものをのみ込むときに隙間を下で塞がないとうまくのみ込めません。これが舌の癖(舌癖)につながります。前歯の隙間に舌が入ると、サ行、タ行、ナ行、ラ行などが舌足らずの発音になってしまいます。舌癖を矯正し発音を直さないと、成人しても幼児のような発音になってしまいます。幼児が指を舐める指しゃぶりと、永久歯が生えるくらいになった子どもの親指しゃぶりは別のものです。子どもの親指しゃぶりについて、指を口に突っ込む深さ(第一関節まで/親指の根元まで)、時間の長さ、そして頻度(たまに/常に)を観察してください。一日中頻繁に吸っていて、その吸い方が強い場合は指ダコができています。小学生になっても指しゃぶりが続く場合には、意図してしっかりと外遊びの時間をつくり、家にいるときも何もしない時間をつくらないように手伝いや遊びまたは作業を決めます。またお子さんをひとりぼっちにしないで、できるだけいっしょに過ごしましょう。そして、自分で指しゃぶりをやめるように努力を促し、長時間やめることができたら、いっしょに喜んで、ほめてあげましょう。