親知らずが痛いときに考えられる原因は?

親知らずが生えてくるとき、「なんだか奥の方がズキズキする」「腫れてごはんが食べづらい」といった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
親知らずの痛みは、単なる「生えかけの違和感」だけでなく、炎症や感染などのトラブルが関係していることが少なくありません。
今回は、親知らずが痛むときに考えられる主な原因をわかりやすくご紹介します。

親知らずの痛みはなぜ起こるの?

親知らずは奥歯の一番奥にあり、他の歯と比べて生えるスペースが狭いことが多い歯です。
顎が小さい現代人では、親知らずが 横向きや斜め に生えてしまい、歯ぐきの一部に埋もれたままになることがあります。
そのため、汚れがたまりやすく、炎症や感染が起こりやすい環境ができてしまうのです。

親知らずの痛みにはいくつかの原因がありますが、主なものは以下の通りです。

智歯周囲炎(ちししゅういえん)

親知らずの痛みでもっとも多いのが「智歯周囲炎」と呼ばれる炎症です。
これは、親知らずの周囲の歯ぐきに細菌が入り込み、腫れや痛みを引き起こすものです。

特に、一部だけ歯ぐきから顔を出している親知らず(半埋伏) に起こりやすく、
歯と歯ぐきの間にできた小さな隙間に食べかすや細菌がたまることで炎症が広がります。

症状としては、

  • 歯ぐきが赤く腫れる
  • 噛むと痛い
  • 顎の下が重く感じる
  • 口を開けづらい
    といったものがみられます。

重症化すると、顔が腫れたり、発熱したりすることもあります。
この場合は早めに歯科医院で治療を受け、抗生剤や消炎処置が必要になることもあります。

親知らずのむし歯

親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくく、汚れが残りやすい場所です。
そのため、むし歯になりやすい歯 の代表格でもあります。

さらに厄介なのは、親知らずがむし歯になるだけでなく、その手前の歯までむし歯が広がる ことです。
親知らずが斜めに生えていると、隣の歯との間にすき間ができ、そこに汚れが溜まりやすくなります。
その結果、気づかないうちに奥歯の裏側がむし歯になってしまうケースもあります。

痛みが出たときにはすでにむし歯が進行していることも多く、
治療が難しい場合には親知らずを抜歯することを検討することもあります。

歯ぐきの炎症(歯肉炎・歯周炎)

親知らずの周囲だけでなく、全体的に歯ぐきの炎症がある場合も、
親知らず付近に痛みや腫れを感じることがあります。

歯垢(プラーク)や歯石がたまることで歯ぐきが炎症を起こし、
歯磨きのときに出血したり、歯ぐきがうずくように痛んだりするのが特徴です。

特に親知らずの周辺は歯ブラシが届きにくいため、
他の場所よりも早く炎症が悪化してしまうことがあります。
定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、こうした炎症を予防することができます。

親知らずが隣の歯を圧迫している

親知らずが 横向きや斜めに生えている場合、その歯の根が手前の奥歯を押してしまうことがあります。
これを「歯の圧迫」といい、痛みや違和感の原因になることがあります。

このような圧迫は、レントゲンで確認して初めて分かることも多く、
「むし歯もないのに奥が痛い」という場合にはこの圧迫が関係しているケースもあります。

放置すると、隣の歯の根が溶けたり、歯並びに影響が出たりすることがあるため、
早めに歯科医院で診断を受けることが大切です。

親知らずの周囲に膿がたまる(嚢胞・のうほう)

親知らずが完全に埋まっている場合(埋伏歯)には、歯の周りに**嚢胞(のうほう)**と呼ばれる袋状の膿がたまることがあります。
嚢胞が大きくなると、骨を圧迫したり、他の歯を押したりして痛みや腫れを引き起こすことがあります。

嚢胞は放置すると大きくなってしまうことがあり、
レントゲンやCT検査で確認されることが多いです。
必要に応じて外科的に除去する治療が行われます。

こんなときはすぐ歯科医院へ

親知らずの痛みが軽くても、次のような症状がある場合は早めに受診しましょう。

  • 奥の歯ぐきが腫れている
  • 口が開けづらい、顎が痛い
  • 発熱やリンパの腫れがある
  • 痛みが数日続いている

親知らずの痛みは、一時的におさまっても再発することが多いです。
そのため、原因を特定して適切な処置を行うことが大切です。

親知らずの痛みには、智歯周囲炎・むし歯・歯ぐきの炎症・圧迫・嚢胞 など、さまざまな原因があります。自分では見えにくい位置にあるため、放置しているうちに症状が悪化してしまうことも少なくありません。「なんとなく奥がうずく」「噛むと痛い」と感じたら、早めに歯科医院で診てもらいましょう。