親知らずとは?
多くの人が「親知らず(おやしらず)」という言葉を耳にしたことがあると思います。実際にどんな歯なのか、なぜ「親知らず」と呼ばれるのか、しっていますか?そして、なぜトラブルを起こしやすいのか知っている方は意外と少ないかもしれません。今回は、親知らずの基本的な知識をご紹介します。
目次
「親知らず」という名前の由来
親知らずは、正式には「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」と呼ばれます。
奥歯の中でも一番後ろに位置する歯で、通常は上下左右の4本(合計4本)あります。
この歯が「親知らず」と呼ばれるようになった理由には諸説あります。最も一般的なのは 「生える時期が遅く、親が知らないうちに生えてくる」 という説です。
多くの永久歯は小学校から中学生くらいの間に生えそろいますが、親知らずは18歳前後から20代前半にかけて生えることが多いですが、すでに親元を離れている年齢であるため「親知らず」と名付けられたといわれています。
親知らずはなぜ生えるの?
人間は、乳歯から永久歯へと生え変わる過程で、上下合わせて28本の歯が揃います。親知らずはそれに続いて最後に生えてくる永久歯です。
もともと人類の祖先は、今よりもあごが大きく、硬い食べ物を噛む生活をしていたため、奥歯がもう1本必要でした。親知らずは、そうした「しっかり噛むための追加の奥歯」として機能していたと考えられています。しかし現代人は、食生活の変化によって柔らかいものを食べる機会が増えました。そしてあごの骨が昔よりも小さくなりました。
つまり、親知らずが生えるスペースが足りない人が多くなっているのです。
その結果、骨や隣の歯に押されて途中で止まったり、歯ぐきの中に埋まったままになったりすることが多くなっています。
親知らずの生え方の違い
親知らずは、ほかの歯と同じように「歯胚(しはい)」という芽のような組織が顎の中にできるところから始まります。
ただし、この歯胚は他の歯よりも形成が遅く、顎の奥のスペースに限りがあるため、まっすぐ生えずに 横向きや斜め に成長してしまうことがあります。
正常にまっすぐ生えるタイプ
まっすぐ正しい位置に生える場合、他の奥歯と同じように噛む機能を補うことができます。
ただし、きれいに生えても奥にあるため歯ブラシが届きにくく虫歯になりやすいです。また、歯周病のリスクは高めです。
一部だけ歯ぐきから見えるタイプ(半埋伏)
歯の一部だけが見えている状態です。歯ぐきとの隙間に食べかすや細菌が入り込みやすく、炎症を起こしやすくなります。
完全に埋まっているタイプ(完全埋伏)
歯ぐきや骨の中に完全に埋まっているタイプです。普段は見えませんが、歯の根が隣の歯を圧迫して痛みが出たり、レントゲンで偶然発見されたりすることもあります。
現代人で親知らずのトラブルが多い理由
昔の人に比べて現代人が親知らずで悩むケースが多いのにはいくつかの理由があります。
あごが小さくなっている
前述の通り、現代人は柔らかい食事が中心になり、顎の骨が発達しにくくなっています。スペースが足りないため、親知らずが斜めや横向きに生えてしまうことが多くなっているのです。
口の奥で磨きにくい位置にある
親知らずは最も奥にあるため、歯ブラシが届きにくいという問題もあります。結果として、**むし歯や歯ぐきの炎症(智歯周囲炎)**が起こりやすくなります。
自覚症状が出にくい
痛みや腫れが強く出るまで気づかないケースも多いです。つまり、気づいたときにはすでに隣の歯に悪影響を与えていることがあります。とくに、埋まったままの親知らずはレントゲンでしか確認できないため、定期検診でのチェックが大切です。
トラブルに気づくきっかけ
親知らずのトラブルは、突然の激しい痛みが出ることもありますが、多くの場合は 「なんとなく違和感がある」 程度の軽いサインです。
以下のような症状がある場合は、親知らずが原因かもしれません。
- 奥歯のあたりが重い感じがする
- 歯ぐきが腫れている、または出血しやすい
- 食べ物が奥の方に挟まりやすい
- 口を開けにくい、顎がつっぱる感じがある
- 頭痛や喉の違和感を感じることがある
このようなサインを放置していると、親知らずの周りに 炎症(智歯周囲炎) が起きたり、隣の歯が虫歯になったりすることがあります。
「痛くないから大丈夫」と思っていても、歯科医院でレントゲンを撮ると埋まった親知らずがトラブルの原因だった、というケースも少なくありません。
まとめ
親知らずは「一番奥に生える最後の永久歯」。現代人では顎のスペース不足からさまざまなトラブルを起こしやすい歯です。
痛みや腫れがなくても、奥歯に違和感があれば一度歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。